〇第一日目

1.日時:
令和5年3月7(火)13:45~16:30
2.場所:
岡山県農林水産総合センター森林研究所
3.参加者:
森林研究所特別研究員:藤原直哉博士
総合センター総括参事:花田智雄
まつたけ再生・復活推進協議会:
松田龍二代表、竹本実監事、市原(事務局)
4.内容:
(1)岡山県におけるまつたけの研究について藤原氏から説明

・岡山県は現在まつたけの流通量は全国第3位(岩手県、長野県に次ぐ)。
・古くは製鉄、製塩、製陶が盛んで、大量の燃料を必要とした。戦後も炭焼きが盛んで、貧栄養な土壌に生息するアカマツ林が最盛期を迎えた。
・その後、松枯れの大量発生があり、その上アカマツ林が高樹齢化し、まつたけの栄養源となる新鮮な細根が減少した。
・まつたけの発生適地を経験則から次のように述べられた。
①土壌はやや乾燥気味の酸性土壌(PH:4.0~5.0)…バクテリアが発生しない
➁地形は尾根、北~東~南向きの斜面…西日が当たらない
➂林型はアカマツ10~30年
➃林相は天然林、人工林(造成地、禿山)
⑤立木密度は4,000~6,000本/ha、細根蜜状態
⑥有機物層は10㎝以下
・昔良く生えていて今松枯れ等では生えていないところは、腐葉土がたまり、それをいくら整地して土壌を刈り取っても栄養素が土壌に浸み込んでいてまつたけ再生地としては適さない。
・気候温暖化もあり、昔とれていたところが再生地となるとは限らない。
・今は北海道で良く生えている。北海道大学がまつたけ研究に熱心。
・環境整備としては以下を心掛ける。
①被圧木の除伐
➁枯損木の除去
➂落ち葉、腐植の除去
➃アカマツ(細根)の育成
⑤光環境の調整
⑥害菌の抑制
・まつたけの発生は、健全なアカマツ林の面積に関連している。
〇第2日目

1.日時:
令和5年3月8日(水)9:45~11:00
2.場所:
岡山県赤磐市暮田地区
3.参加者:
森林研究所特別研究員:藤原直哉博士
岡山県農林水産事業部東備地域森林課長:黒瀬勝雄
暮田赤松を守る会林業研究グループ会長:寺澤福美
暮田赤松を守る会会員:坪井周次郎
まつたけ再生・復活推進協議会:松田龍二代表、竹下実監事、市原(事務局)
4.内容:
(1)まつたけ山現地視察

・山に入る前に、きのこ館(集会所)にて、まつたけ再生のいきさつ、実情等について資料内容を交えdiscussした。
・松くい虫被害は標高の低い地域から高い地域に拡大した。暮田地区は標高250mに位置し、松枯れは遅れて来た。
・まつ林の減少を危惧した地区の方々が平成13年から区林を利用してアカマツの植栽を始めたのがキッカケ。それが写真に見るように現在元気な生きのよいアカマツ林に育っている。
・山の中に入って見ると整然とアカマツが並んでおり、人の手で植えられたことが一目でわかる。下刈りもキチンとされており、灌木類は非常に少ない。スギやヒノキ林とは異なり、明るさが確保されているため、下草が茂っている。
・相当アカマツが密集してきているので、優良な個体を残すべく除伐を行う必要があると考えられている。
・暮田地区では今でもアカマツの植栽が続けられている。高齢化が進んでいるので、森林組合に依頼して植栽されている。作業方法は大きなマツや広葉樹は残しながら、地ごしらえを行った後、抵抗性アカマツの苗木を植栽している。徳地で植栽をされるときは抵抗性アカマツを進められた。
・「暮田赤松を守る会」は、地区の方々が会員となり、アカマツの植栽だけでなく、森林研究所の協力の下、ホンシメジの栽培にも取り組まれている。元々はホンシメジを栽培することで赤松を守る会はスタートしたそうで、活動途中に、全く予想外に造成地に生えたアカマツの周りにまつたけが見つかり、まつたけ再生が始まった。
・暮田地区のアカマツ林は、地区の方々と森林組合、松林の保全対策に取り組む赤磐市が一丸となって努力されていることで守られていることが良くわかる。
・現会長の寺澤さんは昨年就任されたばかりですが、前会長の奥田さんが、思いついたらすぐ実行される行動派で、リーダーシップがあり、人望も厚く、女性軍が進んで活動に参加される下地を作られた。特に婦人会が協力的で集会所で料理を作ったり、山仕事にも進んで参加してもらえている。このような会を継続させていく上で、女性の力は極めて大切であることを強調された。
・通常の活動には地域の方がいつも14,5人参加される。
・ホンシメジの販売や高圧線鉄塔代(敷地内にある)による収入が多く、会の財政状況は良い。ボランティアも無償ではなく有償で行っている。ネットワークも広がっている。徳地でもお金を稼ぐことを真剣に考え、有償ボランティアで活動人口を増やして行くことをこれからは考えなければならない。
・きのこ館が集会場所で、そこから近距離にアカマツ林が位置している。乗用車で山の入り口まで行けて、入り口には運動場のような大きな広場があり、車は何十台も止めることができる。活動場所はアクセスが良いところが極めて重要といわれ、その点では徳地の活動場所はアクセスのよいところにしたのは正解だった。
〇今回の研修から従来の活動で軌道修正および新たに取り組むポイント
①昔まつたけが生えていたところを再生適正地と考えていたが、そこは必ずしも適正地ではない。
➁アカマツの樹齢が30年~40年でないとまつたけは生えてこないと考えていたが、10年~30年の比較的若い細根が必要と分かった。
➂10年でまつたけの可能性があれば今から精力的に植林して、成長が待てる愉しみが出てきた。
➃植林には抵抗性松が良い。害虫等に強い。山口県の関係機関に相談すると購入できるのではないかのコメントをいただいた。
⑤南向きとか山の向きが重要と考えていたが、西日が当たらなければ向きはさほど重要ではない。
⑥ともに活動する人をもっと増やす必要があり、そのためにはまずお金を稼ぐ必要がある。ボランティアも無償ではなく有償にしないと継続しない。
⑦地域を巻き込むこと。特に女性のパワーを活かす術を磨かなければならない。暮田地区のように婦人会と仲良くなることを心掛けたい。
〇まとめと謝辞
今回の研修は2日間とも天候に恵まれ、快適で充実したものとなった。
「百聞は一見にしかず」で現地を見ることで、今まで考え、悩んでいたことが、すべて鮮明にクリアになったように思う。
今回の成果は学んだことを実行し、目に見える形として地域に形跡として残らないと意味がない。心を引き締めて今後の活動に取り組んでいきたい。
今回の出張に際し、視察先の紹介や現地との連絡に労をいただいた山口県農林水産事務所の池田主査、都留主任には大変お世話なりました。
R2Dラボの皆さまのご協力、ご支援ありがとうございました。
また無駄とも思える活動を普段から理解いただき、積極的に出張を後押ししていただいた職場の上司に感謝申し上げます。
引き続きご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

